これらの改革に共通するのはまた、労働組合などの当事者(大学の教員、従業員、学生組合)、識者との協議をせず、性急に閣議決定されたことだ(国鉄改革は労働法と同様、「政令」で行なわれる)。大統領に当選して以後のマクロンは、キャンペーン中の社会対話を強調する中道的イメージとは真逆の、すべて自分(と少数)で決めて上から押しつける強権的な政治を行なっている(最近ではルイ14世をもちだすほど権力に酔いしれているが、パリ政治学院政治調査センターの世論調査でも55%が大統領を「強権的すぎる」と答えている)。労働組合など歴史的に人々を代弁してきた団体の存在を矮小化し(労働組合も弱体化と分裂が目立ち、いろいろ問題があるが)、政府に好意的な多くの主要メディアを使って、ネオリベラル改革をどんどん進めるつもりのようだ。同時に、空港建設が中止になったノートルダム・デ・ランドに住み着いた人々への弾圧(詳しくは別の機会に述べる)、難民の排除(非人道的な法律可決)、大学を占拠した学生の強制排除など、機動隊・憲兵隊を頻繁に出動させる過度で強硬な治安政策にも、反対派との対話・交渉を拒む姿勢が現れており、ネオリベラル政策をTINA(There is no alternativeこの道しかない)と宣言して強引に進めた、英国のサッチャー元首相を思わせる。